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やさしい自動制御のお話

第一章 温度を制御するってどういうこと?

自動制御は、工場・プラントを効率よく運営していく上で、欠かせないものである。例えば、自動制御によって省資源、省エネルギー、省力化がはかれ、工場・プラント運営の目的の一つである運転コストの低減に寄与している。また、操業条件が一定化されるため、バラツキが減少し、均一性が確保でき、製品の品質を向上できるなどのメリットがある。最近では、環境保全のために、公害の少ない操業および公害防止装置などに様々な制御が使われている。中でも温度制御は多くのプロセスで用いられており、温度を一定にすることによって、均一な製品が得られる生産につながることが多い。 本章では、温度制御をテーマに基本的な制御の考え方について述べることにする。

1.温度制御とは
2.自動による温度制御
3.周囲温度による影響
4.フィードバック制御について
5.フィードバック制御の欠点
6.制御の構成要素
7.まとめ

■ 1.温度制御とは

一般的に温度制御とはどの様な機能をもち、どんな操作が行われるかを図1に示す熱帯魚を飼育する場合を例として考えてみる。熱帯魚が育成するのに最も適した水温を30℃とし、ガラス温度計を見ながら水槽の中にある電気ヒータのスイッチを入切して水槽の温度を一定に保つ。

上記の行動を分解してみると次のようになる。

1) 運転目標を設定する。
水槽の温度を30℃とする。
2) 運転状態を知る。
ガラス温度計を目視する。
3) 運転目標と運転状態の差を知る。
ガラス温度計の温度と目標値である30℃が一致しているか見る。
4) 差があれば差を無くすように操作を行う。
ガラス温度計の温度と目標値30℃に差があればヒータを入切させる。
図1 手動による温度制御
図1 手動による温度制御

このようにある定められた目標値に対し温度を一定に保つように判断し、行動することを“温度制御”または“温度コントロール”と言う。また、この場合人の手を介して温度を制御していることから“手動制御”と呼ぶ。

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■ 2.自動による温度制御

人の手を介さずに自動的に水槽の温度を30℃に一定に保つためには、図2に示すように手でヒータのスイッチを入切する代わりに温度調節計を用いる。また、ガラス温度計の代わりに温度検出器を設置する。

温度センサが水槽の温度を検出し、温度調節計は検出された温度が30℃以下であればヒータの電源を入れ、30℃以上になればヒータの電源を切る。これを繰り返すことにより、水槽の温度は30℃付近に保たれる。

これらの行動を手動で温度制御を行った場合と同じように分解すると次のようになる。

1) 運転目標を設定する。
水槽の温度を30℃と、温度調節計に設定する。
2) 運転状態を知る。
温度センサで検知し、温度調節計に伝える。
3) 運転目標と運転状態の差を見る。
温度調節計内で設定されている目標値と温度センサが検出した現在値を比較する。
4) 差があれば差を無くすように操作を行う。
差があった場合に温度調節計からヒータの電源を入切する。
図2 自動による温度制御
図2 自動による温度制御

以上のように水槽の温度温度センサ温度調節計ヒータ水槽の温度と言った一連の流れにより、温度を一定に保つことができる。

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■ 3.周囲温度による影響

ここで水槽の周囲温度による影響を考えてみる。周囲が風などのない安定した雰囲気で、室温も30℃であるとすると、水槽の温度が30℃になったとき、この状態が長時間安定する。しかし、室温が20℃のときは、水槽が30℃になりヒータの電源が切れても、周囲温度の影響により水温はすぐに下がり、頻繁にヒータの電源を入れなければならない。逆に室温が40℃のとき、水槽の温度は自然に30℃以上になり、ヒータの代わりに冷却器で冷やさなければならない。このように水槽の温度は常にその周囲温度の影響を受けている、制御系の外から制御対象に直接影響を及ぼすものを“外乱”と言う。
これらをブロック図で書くと図3のようになり、これをフィードバックループと呼ぶ。

図3 自動による温度制御のブロック図
図3 自動による温度制御のブロック図
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■ 4.フィードバック制御について

フィードバックグループによって制御した結果(出力)を入力側に戻し、目標値と比較して次の制御へ役立てようとすることをフィードバック制御と言い、今日の制御のほとんどがこれを採用している。

フィードバック制御の構造を詳しく示したものが図4である。

各項目の説明については以下の通りである。

図4 フィードバックループ
図4 フィードバックループ
目標値
制御の目標となる値。(水槽の設定温度
調節部
設定温度と検出温度の差を比較し、その差を小さくするように操作部へ信号を出す。
温度調節計または人の手によるヒータのON/OFF
操作部
調節部の信号によって作動し、制御対象の温度を操作する。(ヒータ
センサ部
制御対象の変化を検出する(温度検出器
制御対象
制御される対象(水槽の温度
外乱
制御対象に直接影響を与えるもの(室温

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■ 5.フィードバック制御の欠点

フィードバック制御は、制御の定番と言っても過言ではないが、“結果をみてから修正する制御”であることから、外乱に弱いと言う欠点をもっている。つまり、風が窓から入り室温が変化するなどの外乱が発生すると、それが制御対象(水槽の温度)に影響を与え、設定温度と現在値の差が生まれる、その差が生まれてからの制御を行うために、外乱の影響を本質的に避けられない。

このフィードバック制御の欠点を補うために、PIDのパラメータ(第四章に詳しく紹介する)の細かな調整や、外乱が制御対象に影響を与える前に検出し必要な操作量を加えるなどの工夫が必要である。

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■ 6.制御の構成要素

一般的にフィードバック制御を行う上で必要な要素を大きく分けるとセンサ部、制御部、操作部の3つに分かれている。このことから、水槽の温度制御の例を見ると温度の検出を行う温度センサ比較・判断を行う温度調節計水槽の温度に変化を与える電気ヒータの組み合わせで、自動的にこの動作が繰り返され、水槽の温度が一定に調整される。

センサ部、制御部、操作部についての概要は以下の通りである。

センサ部
センサは制御にとって、重要な要素である。センサによって、制御対象(水槽の温度)の正しい情報を得ることができなければ、制御もあやふやになってしまう。 図5に温度センサの種類と特長を示す。

種類
検出方法
特長
欠点
常用温度範囲
熱電対T/C 熱起電力(ゼーベック効果) ・比較的高温度部の測定に適する。
・遠隔測定ができる。
・応答が速い。
・精度がよい。
・冷接点補償が必要。
熱電対から計器までの配線は補償導線を用いなければならない。
低温部の測定に適しない。(熱起電力が小さいため)
-180〜1400℃
測温抵抗体RTD 抵抗値変化 ・比較的低温部の測定に適する。
・遠隔測定ができる。
・応答が速い。
・精度がよい。
・高温部の測定ができない。 -50〜400℃
液膨張式(液体膨張) トルエン、シリコン油等の液体膨張 ・現場形計器(検出部と指示、調節部が一体)。
・比較的安価である。
・使い易い。
・簡単に操作できる。
・使用温度範囲が狭い。
・遠隔測定ができない。
・応答が遅い。
・精度があまり良くない。
-15〜200℃
バイメタル式 2金属の熱膨張率の違い ・安価である。
・使い易い。
・簡単に操作できる。
・使用温度範囲が狭い。
・応答が遅い。
・精度が悪い。
・寿命があまり長くない。
-15〜200℃
幅射検出器 物体の幅射熱(赤外線エネルギー) ・熱電対よりも高温部の測定ができる。
・遠隔測定ができる。
・応答が速い。
測温物質に非接触で測定できる。
・測定物質によって幅射率の補正が必要である。
・高価である。
・周囲環境や外乱の影響を受けやすい。
0〜数千度

制御部(温度調節計)
制御部である温度調節計は制御の中心となる部分で、PID制御が現在の制御アルゴリズムのほとんどを占めている。
従来、アナログ式の温度計が多く用いられてきた。その後1970年代半ばに登場したマイクロプロセッサを内蔵したデジタル式の温度調節計が出現し、現在使われているコントロータのほとんどがデジタル式である。(図6を参照)
図6 温度調節計の外観 (パソコンローダ対応)
図6 温度調節計の外観
(パソコンローダ対応)

操作部
操作部は温度調節計からの操作信号を受けて直接制御対象に変化を与える装置を言い、扱うプロセスによって操作部は様々である。温度制御でよく使われる操作部の一例を紹介する。
図7を参照)
図7 サイリスタユニットの外観
図7 サイリスタユニットの外観
電気ヒータを制御する場合
リレー
SSR(ソリッドステートリレー)
SCR(サイリスユニット)
水などの流体を制御する場合
空気式調節弁(電空ポジションが必要)
電動弁
電磁弁



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■ 7.まとめ

最近では制御を構成する3つの要素の他に、ユーザの簡単操作に対応するためのタッチパネルなどのマンマシンインターフェイスも制御にとって重要となってきている。ユーザの多様化するニーズに応えるため製品や装置も高機能化、多機能化が進んでいるが、その反面操作が複雑になりがちである。そのため、対話形式での設定やモニタができるタッチパネルなどが多くの装置に組み込まれている。(図8を参照)

また、温度調節計においても、ユーザの簡単操作ニーズに応えるためタッチパネルなどと接続できる通信機能付きの調節計のニーズが高まっている。

これからの制御では、センサ部・制御部・操作部の組み合わせたものだけでなく、ユーザの使いやすさやメンテナンス性を考慮したマンマシンインターフェイスも含めた制御ループを構成することが重要である。
図8 タッチパネルの外観
図8 タッチパネルの外観

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